前回は、西洋医学と東洋医学の違い、日本の東洋医学(漢方医学)、未病の種類と症状についてお話ししました。
まだ読まれていない方はこちら→『体の不調を治す!東洋医学のしくみを分かりやすく解説【基本編】』
普段、私たちに起こる症状(不眠、頭痛、便秘、倦怠感など)は未病であり、病気の前段階にあたります。
そして、病気を扱う病院では未病への対応はできません。これは、未病に対応できない病院が悪いという話ではありません。
「病院は病気を扱う所である」というだけの話です。
そのため、未病に対しては漢方医学に頼り、自己管理をしていくことが重要となります。
しかし、漢方医学に対して知識を持っている人は少なく、なかなか治療の一歩目を踏み出せないでいる人は多いと思います。
それゆえに西洋薬に頼ってしまいますが、相手は未病であるため、病気に対応する西洋薬では効果が出にくいばかりか、副作用で胃腸などを痛めることがあります。
そこで今回は、漢方医学について知識を深めてもらい、安心して漢方医院に通ってもらえるように「漢方医学の視点からみた病気の原因と診察法」についてお話しします。
漢方医学からみた病気の原因
病気の原因に対しての考え方は西洋医学と漢方医学で異なります。
西洋医学では基本的に遺伝子の異常によって病気が発症すると考えています。
それに対して漢方医学では、自身の体が持つ自律神経、体内循環、免疫のバランスが崩れることで病原菌が体内に侵入する隙を作ってしまい、病気が発症すると考えます。
このバランスを漢方医学では「気血水バランス」と呼んでいます。気が自律神経、血が体内循環、水が免疫にあたり、互いが影響しあって全身を巡り、生命活動を保ってくれます。
気血水のうち、1つが乱れた状態ではまだ未病ですが、2つ以上乱れてしまうと病気となります。
そして、この気血水バランスを乱す要因を漢方医学では3つに分けています。
1.外因
季節や生活の環境による要因を「外因」と言います。漢方医学では、気候の変化による要因を「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「火」の「六淫(ろくいん)」で考えます。これらの要因が病気をもたらし、季節によって病気が異なってきます。
このほか、自然環境、大気汚染なども外因にあたり、気血水バランスを乱す要因となります。大気汚染が激しいところでは喘息が多くなったり、海や湖の地域ではリウマチ、関節痛が多くなります。
2.内因
喜怒哀楽といった感情の変化は適度であれば、体に良い刺激となります。しかし、これらも度が過ぎてしまうと病気の原因となってしまいます。このような体の内側に存在する気血水バランスを乱す要因を「内因」と言います。
そして、これらの感情は7つに分類され、七情と呼ばれています。(喜・怒・思・憂・悲・恐・驚)過度な七情は内臓を直接傷つけると言われており、病気の原因となります。
・思➝脾(ひ)
悩み過ぎは脾臓を傷つける
・怒➝肝(かん)
怒り過ぎは肝臓を傷つける
・喜➝心(しん)
喜び過ぎは心臓を傷つける
・憂、悲➝肺(はい)
憂うつ、悲しみ過ぎは肺を傷つける
・恐、驚➝腎(じん)
恐怖や驚き過ぎは腎臓を傷つける
3.不内外因
外因と内因に分けられない病気の原因を「不内外因」と言います。具体的には、以下のものがあります。
・不規則な生活(過労、運動不足、睡眠不足、激しい運動)
・不摂生な食生活(暴飲暴食、偏食など)
・体に負担をかける出産(多産、無産、高齢出産、若年産)
・性生活(過度、過少のセックス、性病)
・外傷(骨折、切り傷)
・その他(薬飲みすぎ、サプリメント)
これらの要因も気血水に影響を与え、病気の原因となります。
以上のように、漢方医学では病気の原因を自分の外側、内側、それ以外に分けています。そして、自分自身でコントロールできるところを明確にし、予防に取り組めるようになっています。
漢方医学における病気の診察法
漢方医学における病気の診察法は、西洋医学と異なります。西洋医学では、血液検査やレントゲン、MRI、CT、超音波などの検査を行い、病変部位を特定し、その部位の特徴に合わせて治療が決定します。
それに対して、漢方医学では体力や病気に対する反応、経過、病気の起こり方を見定め、治療方針を決めます。これを「証(しょう)を立てる」といい、漢方医学の診断の基本となります。
証には具体的に「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」「表裏(ひょうり)」「気血水(きけつすい)」などの物差しがありこれらを組み合わせて体の状態と症状を総合的に捉えます。
簡単に言うと、証とは体のバランスのゆがみを表現するひとつの手段です。どのように体のバランスが崩れているか分かれば、どこを整えれば良いか分かるということです。
西洋医学は体内に入ってきたウイルスや細菌に着目し直接撃退する治療。漢方医学はウイルスや細菌がどのようなもので、どこにいるかではなく今、体がだるくて発熱しているという症状に着目し治療を選択します。
私自身が病院で働く人間であるため、西洋医学しか知りませんでしたが、漢方医学の考え方や診察方法を知り、とても興味が湧いたのを覚えています。
先ほど述べた「証を立てる」は漢方医学の診察法の一部になります。今回は一つ一つ説明すると膨大な量になりますので、簡単に診断から治療までの流れをご説明し終わりたいと思います。
漢方医学ではまず四診と呼ばれる診察が行われます。専門医が目、鼻、口、耳、手を使って、証を立てるための情報を収集します。
四診から得られた情報から証が立てられ、その人だけの治療方法が決定します。
そして、治療方法には漢方薬や鍼灸、養生などがあります。
病院で働いていると、よく患者さんから「先生はパソコンばかり見ていて少しも私の方を見てくれない」と言われます。
そりゃそうですよね。西洋医学は検査値やレントゲン、MRIなど、パソコンの中にある情報を頼りにしていますからね。なんかさみしいですよね・・・
逆に、漢方医学は患者さんの顔色やしゃべり方、体格、症状など、患者さんの方を見ないと診察が進みません。
漢方医学を少し学んだ私は、前回、今回の内容から
「本当の医療は西洋医学と東洋医学が手を組むことで達成できるのでは?」と感じました。
以上のように、漢方医学では西洋医学と違い、検査値やレントゲンを使用しません。その代わりに、五感とこれまでの経験(実績)を駆使し、四診から多くの証を立て(患者さんがどのような人でどのような状態にあるのかを事細かに評価する)適切な治療を施します。
まとめ
今回は、前回に引き続き漢方医学についてお話ししました。
まだ、私自身が漢方医学を学んでいる最中であり、説明が穴だらけ、不十分であったかと思います(汗)。すいません。
ただ、今回、知っておいてほしかったのは、漢方医学は決して怪しいものではなく、長い歴史、数多くの経験に基づいた医学であるということです。
そして、医学が進歩しているにも関わらず、病気の発症率は上昇している現代を考えても、予防に適している漢方医学はこれからも私たちにとって必要不可欠の医学となるでしょう。
西洋医学の世界にいるからこそ、気づけたことだと私は思っています。そして、これからも漢方医学について学んでいきたいと思います。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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