5分でわかる!体温を高めることで得られる4つの効果【仕組みと現状】

生物には体温というものがあり、体の中に熱を持っています。そして、この熱を一定に保つことができる動物を「恒温動物」といいます。

私たち人間も恒温動物に属しており、体温の平均値は、脇の下の検温で36.89℃と言われています。

これには、バラツキがあるためおよそ36.5℃から37.2℃の間であれば平熱になります。

では、この体温は何のためにあるのでしょうか?また、この体温が高過ぎたり、低過ぎたりするとどうなるのでしょうか?

実は、体温には健康を維持するという重要な役割があります。それを知っておくことは、風邪などの軽度な病気からガンなどの重度な病気まで、さまざまな病気を予防することにつながります。

そこで、今回は「体温を維持する仕組みと健康との関係性」についてお話しします。




発熱の仕組み

まず、体温は、私たちの体の中でどのように作られているのか理解しておきましょう。
体が熱を生み出すには基礎代謝が必要です。基礎代謝とは、生命を維持することを目的として心臓を動かしたり、内臓を動かしたりするためのエネルギー代謝のことを言います。そして、生命維持に必要なエネルギー量を基礎代謝量と言います。(男性2,000kcal、女性1,800kcalと言われるものです)

基礎代謝は体のあらゆる場所で行われています。内訳は以下の通りです。
脳:約20%
心臓:約7%
肝臓:約27%
腎臓:約10%
筋肉:25%~

このように、体はあらゆる場所で代謝を行います。そして体は、この代謝に伴って熱を作り出すわけです。

体温を高めておくことで健康になる

では、基礎代謝によって体温を維持または高めることができると、どのような効果があるのでしょうか?

それは、健康を維持することができます。体温が上がることによって、酵素の活性化が起きるからです。酵素が活性化することで以下のような効果が得られます。
1.新陳代謝が促される
2.毒素を汗や尿の中に排出することができる
3.傷ついた組織を修復し、自然治癒力を高められる
4.免疫力を高められる

酵素について詳しく知りたいかたはこちらをお読みください。
『けがも病気も早く治る!酵素の種類と働きを超簡単に説明します』

化学反応は、一般的に温度が高いほど活発になります。そして、上記のような効果は、酵素による化学反応であるため、一般的な化学の法則に則り、人の体においても、温度(体温)が高いほど、酵素が活発になると考えられます。

お子さんが風邪を引いたときに熱が上がってくると思いますが、これは、体が基礎代謝を促し体温を高めることで、酵素を活性化させて治癒力を高めている状態と言えます。

そのため、むやみに解熱剤などで体温を下げると治癒力は低下し、風邪が治りにくくなってしまうのです。風邪を引いた場合は、しっかりと熱を出させることが重要になります。

※ただ、体の細胞は42℃を超えると酵素系の障害が起こってしまい、生命維持が困難となってしまうため、体温の上がり過ぎにも注意が必要です。そのために解熱剤があると思ってください。

以上のように、体温を平熱の範囲内で高めておくことは健康の維持や病気またはケガからの回復につながります。




現代人は低体温

それでは、現代人において、体温は高く維持できているのでしょうか?

残念ながら、現代人の体温は、年々下がってきております。50年程前までは平熱が37℃近くだったのに対して、現代人の平熱は36℃ちょっとと言われています。

では、なぜ現代人は低体温になってきているのでしょうか?

それは、基礎代謝に必要なエネルギーが少ないからです。この基礎代謝に必要なエネルギーをATP(アデノシン三リン酸)と言います。そして、現代人はATPを作る能力が低下しています。

少し専門的な話になりますが、体の中でATPを作る方法は2通りあります。
それは、クエン酸回路・電子伝達系解糖系です。

解糖系:グルコース(ブドウ糖)をピルビン酸にまで分解する化学反応で、グルコース1モルにつき2モルのATPが合成されます。この方法は量こそ少ないものの、酸素がなくてもATP(エネルギー)を作ることができるのが特徴です。

簡単に言うと、無酸素状態で糖質を利用しATPを作れる方法(量は少ない)

クエン酸回路:ピルビン酸を分解して、水素(H)と二酸化炭素(CO2)にする化学反応であり、これはミトコンドリアという所で行われます。この時点では解糖系と同じ2モルのATPが合成されます。そして、分解されてできた水素(H)はミトコンドリア内の電子伝達系(水素伝達系)で酸素(O2)と結合し酸化され水(H2O)となり発生したエネルギーは34モルのATPを合成します。この方法は、酸素を使って大量のATP(エネルギー)を作ることができるのが特徴です。

簡単に言うと、有酸素状態で水素を利用しATPを作れる方法(量が多い)

以上のように、ATPを作り出す方法は2通りあります。そして、両者の違いは「酸素の必要性の有無と作れるATPの量」です。

現代人は低酸素状態にある

いままでお話ししてきたように、基礎代謝にはATPが必要であり、ATPは2通りの方法で作ることができます。そして、ATPを大量に作れるクエン酸回路をうまく利用できれば基礎代謝を高めて体温を上げることができます。

つまり、年々体温が下がってきている現代人はクエン酸回路が使いにくい状態にあると言えます。

クエン酸回路の特徴は「酸素」を利用していることです。つまり、現代人は、低酸素状態にあるということになります。ではなぜ、ATP産生工場である、ミトコンドリアに酸素が届かないのでしょうか?

それは、現代人を取り巻く生活環境に答えがあります。現代人は、休みなく働きづめで息をつく時間も場所もないような過酷な生活をしています。このような生活をしていると肉体的にも精神的にもストレスを受けます。そして、ストレスは自律神経の交感神経を刺激します。

交感神経が強く働くと、ミトコンドリアに向かう血管は収縮してしまい、収縮が長時間続くとやがて血流障害を起こします。酸素は血液の中にあり、血流に乗っていくため、血流障害が生じるとミトコンドリアに酸素が届かなくなります。

そうなると、ミトコンドリアでは大量のATPを作ることができなくなってしまうため、解糖系にATP産生をゆだねるわけです。

しかし、解糖系ではわずか2ATPしか作ることができないため、基礎代謝に必要なATPを確保することができません。結果、基礎代謝は高まらず、体温も上がらないということになります。

まとめ

以上のように、現代人はストレス社会の中で生活することで、交感神経を高め、低体温となり、最終的に健康を損ないやすい状態を作っています。そのため、冷え性の方や、体調不良に悩んでいる方は、普段の生活を見直し、交感神経を刺激するようなことを排除していく、または副交感神経を刺激するようなことを取り入れていく必要があります。

次回は、基礎代謝を高めて、体温上昇につなげる実践方法をお伝えします。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。



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